福島市住宅地の地価動向と今後の展望 ― 基準地価の発表を踏まえて - おうち不動産まるごと相談所

福島市住宅地の地価動向と今後の展望 ― 基準地価の発表を踏まえて

福島の地価

2025/09/18

1.令和7年地価調査結果の概観

 

令和7年地価調査において、福島市の住宅地は平均変動率+0.2%と12年連続の上昇を示しました。平均価格は44,600円/㎡(前年44,100円/㎡)で、統計上は小幅ながら堅調さを保っています。

ただし、実務現場の感覚としては、統計値が示す「緩やかな上昇」と実際の市場動向には乖離があることが否めません。ここでは、具体的な基準地の変動事例をもとに、その背景を掘り下げます。

 

2.上昇を示した基準地の事例

 

福島市内でも中心部や交通利便性の高い住宅地では上昇が確認されました。

 

  • 南中央2丁目(福島-9)
     標準価格:78,600円/㎡(前年比+3.0%)
     → JR福島駅から近く、商業施設や医療機関も揃う利便性の高いエリアで、安定的な需要に支えられた上昇です。
  • 宮下町(福島-21)
     標準価格:98,700円/㎡(前年比+2.8%)
     → 市中心部に位置し、事務所需要との競合もある地域。住宅需要と商業地的利用価値の双方が支えとなっています。
  • 笹谷字谷地中(福島-14)
     標準価格:65,300円/㎡(前年比+2.4%)
     → 北部の住宅地ながら市街地へのアクセスが比較的良く、子育て世代を中心に一定の需要を維持しています。

 

これらの事例はいずれも「交通利便性」「生活利便施設への近接性」「都市部としてのブランド力」が共通点です。需要者の属性は中位所得層以上が中心で、取引が比較的スムーズに進む傾向にあります。

 

3.下落を示した基準地の事例

 

一方で、山間部に限らず、市街地外縁の住宅団地や温泉地でも下落が見られています。

 

  • 蓬莱町(福島-3)
     標準価格:23,400円/㎡(前年比▲1.6%)
     → 市南部の大型住宅団地ですが、入居開始から年月を経て世代交代が進まず、高齢化や人口減少が地価に影響しています。
  • 福島市上鳥渡字しのぶ台(福島-8)
     標準価格:20,200円/㎡(前年比▲1.5%)
     → 郊外住宅地で、中心部からの距離と生活利便性の不足から需要が弱含み。
  • 飯坂町湯野(福島-22)
     標準価格:27,200円/㎡(前年比▲1.3%)
     → 飯坂町自体は観光地としての知名度はあるものの、住宅需要は頭打ちで、中心市街地からの距離感もあり需要が伸び悩んでいます。

 

このように、大波地区や飯野町といった中山間地域にとどまらず、蓬莱町のような市内郊外住宅地や飯坂町の温泉街でも下落が見られる点は注目に値します。地価下落は「過疎地域の問題」にとどまらず、市街地周辺エリアにも広がりつつあるのです。

 

4.統計と現場感覚の乖離

 

地価調査は過去の取引事例を基に不動産鑑定評価手法で算出されるため、直近の市況感との間にタイムラグが生じます。そのため「上昇」とされる地点でも、実際の売却交渉では値下げが前提になる場合も多く、現場感覚では「すでに下落に転じている」地域が少なくありません。

特に成約価格をベースに見ると、統計値のプラス幅ほど市場での実感は強くなく、むしろ横ばい~微減という印象が色濃く出ています。この点に地価調査制度の限界があるといえるでしょう。

 

5.今後の展望

 

 

  • 短期(1〜2年)
    中心部や利便性の高い住宅地では小幅な上昇が続く一方、郊外部では下落が続き、統計上は全体として横ばい〜微増の傾向が続く見込み。
  • 中期(3〜5年)
    人口減少の影響が一層強まり、中心部と周辺部の価格格差がさらに拡大。災害リスク地域や需要の乏しいエリアでは、統計上も下落が顕在化する可能性が高い。
  • 長期(10年程度)
    都市再開発が進む福島駅周辺や主要幹線道路沿いは安定した地価形成が続く一方、蓬莱町や飯坂町を含む郊外住宅地・温泉地は需要縮小により持続的な下落が避けられない。

 

 

6.まとめ

 

 

福島市住宅地の地価は、統計上は「緩やかな上昇」を維持しています。しかし、個別事例をみると中心部と郊外で明暗がはっきり分かれ、現場感覚としては「すでに下落に転じている地域」が増えているのが実情です。

山間部だけでなく、蓬莱町や飯坂町といった大規模住宅団地や温泉地でも下落が見られることからも分かるように、福島市全体で「二極化」が進んでいます。したがって、地価を評価する際には、統計値に加え、基準地ごとの変動状況や実際の成約動向を注視し、制度的限界を踏まえた柔軟な分析が求められます。

 

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