2025/09/18
令和7年地価調査において、福島市の住宅地は平均変動率+0.2%と12年連続の上昇を示しました。平均価格は44,600円/㎡(前年44,100円/㎡)で、統計上は小幅ながら堅調さを保っています。
ただし、実務現場の感覚としては、統計値が示す「緩やかな上昇」と実際の市場動向には乖離があることが否めません。ここでは、具体的な基準地の変動事例をもとに、その背景を掘り下げます。
福島市内でも中心部や交通利便性の高い住宅地では上昇が確認されました。
これらの事例はいずれも「交通利便性」「生活利便施設への近接性」「都市部としてのブランド力」が共通点です。需要者の属性は中位所得層以上が中心で、取引が比較的スムーズに進む傾向にあります。
一方で、山間部に限らず、市街地外縁の住宅団地や温泉地でも下落が見られています。
このように、大波地区や飯野町といった中山間地域にとどまらず、蓬莱町のような市内郊外住宅地や飯坂町の温泉街でも下落が見られる点は注目に値します。地価下落は「過疎地域の問題」にとどまらず、市街地周辺エリアにも広がりつつあるのです。
地価調査は過去の取引事例を基に不動産鑑定評価手法で算出されるため、直近の市況感との間にタイムラグが生じます。そのため「上昇」とされる地点でも、実際の売却交渉では値下げが前提になる場合も多く、現場感覚では「すでに下落に転じている」地域が少なくありません。
特に成約価格をベースに見ると、統計値のプラス幅ほど市場での実感は強くなく、むしろ横ばい~微減という印象が色濃く出ています。この点に地価調査制度の限界があるといえるでしょう。
福島市住宅地の地価は、統計上は「緩やかな上昇」を維持しています。しかし、個別事例をみると中心部と郊外で明暗がはっきり分かれ、現場感覚としては「すでに下落に転じている地域」が増えているのが実情です。
山間部だけでなく、蓬莱町や飯坂町といった大規模住宅団地や温泉地でも下落が見られることからも分かるように、福島市全体で「二極化」が進んでいます。したがって、地価を評価する際には、統計値に加え、基準地ごとの変動状況や実際の成約動向を注視し、制度的限界を踏まえた柔軟な分析が求められます。